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フィリピン司会通訳

【通訳者インタビュー:Yさん】日本語・タガログ語・英語のトライリンガルで大臣・議員クラスの通訳経験豊富

将来通訳を目指す高校生インターンが、フィリピンで活躍する通訳者Yさんにインタビューをしました。

フィリピンSクラス通訳者

Yさんは、ネイティブな英語・日本語・タガログ語を用いた同時通訳を得意とし、司会通訳としても活躍しています。通訳歴16年で、大臣や議員クラスから現場スタッフレベルまで状況に応じて臨機応変な対応が好評です。分野も不動産全般、工場監査、調査会社等のFGD、民事裁判、技術セミナー、国際会議、不動産開発、JV契約、法人設立、金融、輸出規制、投資と多岐に渡り、経験も豊富です。

そんなYさんから、通訳というお仕事の魅力や心がけていることなどアドバイスをいただきました。

通訳者インタビューの様子:Yさん

自己紹介をお願いします。

フィリピン在住で通訳のお仕事をしています。Yと申します。35歳です。

両親が教会の牧師をやっている関係で、子供の頃から大勢の前で通訳をやっていました。そういった経験から今通訳のお仕事をしています。フィリピン生まれのフィリピン育ちで日本人らしくないところも少しはあると思いますが、よろしくお願いします。

通訳の経歴としては、大学の際にはデジタルアーツというIT関係の専攻をしていて、その頃から通訳のアルバイトをしていました。その後、ウェブデザイナーをしていたのですが、6年か10年ほどITのお仕事をしながらアルバイトといった形で通訳のお仕事を続けていました。しばらくして、通訳側の需要が高まっていったので、思い切って10年前に通訳を専業として今に至ります。

フィリピン司会通訳

通訳のお仕事をするにあたって大事なスキルはなんですか

理解力が一番重要だと思います。また、言語力やボキャブラリー(語彙力)もですね。あとは、自信と度胸がすごく必要になってきます。

通訳業界では、専門分野が必要になります。例えば、少し驚いたのが日本アパレル最大手ユニクロでの通訳でした。アパレルといえば衣類系で通訳しやすいイメージだと思われるかもしれないですが、私は当初通訳をした際、社内独自の専門用語の多さに驚きました。「今何言ったんだろう」「これどういう意味なんだろう」と一瞬思考が止まって翻弄されてしまうんですよね。そういった場面でどう対処できるかです。私の場合は、現場にユニクロ専属の社内通訳者がいたので、どのような意味なのかを教えていただいていました。その現場で使われる言葉、その内容に対して自分がどのように対応するかというのが本当に大事なのです。

それでも対応できない場面がどうしても出てくることもあります。それも自信と度胸が必要で、今言ったことがわからないということがあれば、ちゃんと先方に「今のところをもう少し噛み砕いて詳細にお伝えいただけますか?」といった形でお願いすれば、わかりやすく説明をいただけます。わからない時は、ちゃんとわからないということが大切です。わからない内容をわからない状況のまま、通訳してしまうと大変なことになりますから。

あとは、目的を知ることもすごく大事です。通訳というと、相手が言ったことをそのまま通訳すると思うかもしれないですが、実はそういった場面があって、そうでない場面もあります。例えば、交渉で来られてる人の通訳であれば「こういった形に結果としてもっていきたい」といった目的があります。自分もクライアントと同じ立場になって、通訳をしながら「このような形でお伝えした方がいいですか?」と相手に提案をして、コンサルタントのような立ち位置で、通訳をしながら相手の立場から事を進める。そういった理解力と思考というのもすごく大事です。

それらに加えて「臨機応変な対応力」と先ほどお伝えしました「自信と度胸」で、その場に立って潰れないことが本当に一番重要だと思います。

フィリピン国際会議での通訳

お仕事をするにあたって心がけていることはなんですか?

「発言の意図を知って訳すこと」そして「無理に訳さないこと」です。少しでも疑問があれば、逐次通訳の場合はクラアントに聞くような機会があるので「今仰ったことは、こんな意味ですか」と確認をとることをすごく大事にしています。

また、発言は慎重に行っています。特に交渉や契約関係、入札や注文のような場面では「通訳の発言」が実際に「クライアントの発言」となるので、発言を誤ると責任が重大になってきます。そういった場面での使い分けです。これが自分のクライアントの責任なのか、それとも相手側のやる事なのか、または第三者がいるのか、そこの関係性をしっかりと把握するというのもすごく大事だと考えています。

あとはクライアントの意図をあらかじめ知る事、そのゴール(目的)を知る事で、実際に交渉を進めて行く中で「こうするといいんじゃないかな」「こうやった方がいいんじゃないかな」と自分の伝えやすい言葉だとか、自分のわかりやすい内容で事を進められる。そういった事を心がけると通訳がしやすくなります。クライアントの言った専門用語をそのまま訳すと、相手が専門用語同士で話してしまうので、途中で自分でもわからなくなってしまう。

通訳をやって行く中で専門用語だけにとらわれず、専門用語の意味をちゃんと理解してその意味で伝えることができれば、もっと自分にもわかりやすい世界で事が進められます。自分もクライアントと同じ立場から、事を進めるというのが大事ですね。

過去の案件で最もやりがいを感じたお仕事は何ですか、また一番の思い出や達成感のあったエピソードは何ですか?

 

フィリピン二カ国間会議の通訳一番やりがいがあったのは、国際セミナーですね。国際セミナーで流通に関わる様々な規律、法律の取り決めが年に一回あって、その案件を最初受けた時は200ページほどの書類が届いて驚きました。しかも同時通訳だったのです。通訳には、逐次通訳と同時通訳があって、逐次では交互に話すので考える時間があるのですが、同時通訳の場合、時間をできるだけ短縮するために相手が喋りながら別のマイクとヘッドフォンを通して同時に通訳をする形式です。

そういった状況で考える時間はないので、そういった案件に対して、しかも専門用語がたくさんあるものを受けてしまったときまった時、しっかりとリサーチして勉強して、もう大学受験並みにあらかじめ翻訳を入れるなど準備していました。やり遂げた後は、フィリピン貿易産業所から感謝状をいただきました。

その時の達成感というのは非常に大きかったです。以来、毎年ご依頼いただけるようになりました。基本的に同時通訳の場合は2人体制なので、普段一緒にお仕事をしている通訳のパートナーがいるというのは本当に大事ですね。それを共に達成できたことが一番嬉しかったです。

あと思い出深いものがあるとしたら、やはり一番最初に受けた通訳です。私がまだ高校生だった頃、日本からフィリピンに来られた経歴豊富なご老人の方が、なんの経験もない自分に依頼をしてくれました。フィリピンで特殊なプロダクトを探していて、その時に一緒にまわって、交渉をしていました。それを見つけたときに「Yくん通訳向いているよ!」と言っていただけた最初のクライアントさんの経験です。それが今でも思い出深いです。

どんな人物が通訳のお仕事に向いていますか?

まずは、話すことが好きな人です。そして様々な業界について詳しく知る姿勢をもっている人。通訳者として活動をすると毎日様々な分野でのお仕事になるので、昨日は産業関係で、今日は医療関係、明日は不動産関係といったように毎日違う仕事をすることになります。そういった色んな仕事を経験することが好きな人は、通訳に向いていると思います。

あと、通訳と翻訳という仕事は同じものと考えられがちですが、通訳が得意な人と翻訳が得意な人はかなり異なります。例えば、私の場合は話すことが好きですが、書いたり、打つことが嫌いですので、翻訳は大嫌いです。翻訳と通訳その二つの特徴を知ったうえで、自分は通訳に向いているのか、翻訳に向いているのか決めるのもいいと思います。知人でも通訳が好きな人がいたり、翻訳が好きな人もいたり、両方やられる方もいますね。

あとは出来る限り緊張しない人。耳がいい人です。通訳は、少しでも耳が悪いと仕事にならないからです。あとはちゃんと準備ができたり、リサーチができるというのも非常に重要です。そして、時間厳守ができる人ですね。

弊社では、フィリピン現地(マニラ・セブ)で通訳者を手配しています。個人のお客様のアテンドから企業間の商談や工場での逐次通訳、国際会議や国際セミナーにおける同時通訳・ウィスパリングなど幅広くご利用いただけます。フィリピンでお困りのことがございましたら、お気軽にご相談くださいませ。